さびない鋼・ステンレス鋼
日常生活の中で、ガラスのコップや瀬戸物の茶碗に食害の疑念をいだくことがない様に、今やステンレスの材質に不審感をいだくことはまずないのではないでしょうか。又、同時に信頼感が強すぎるあまり、ステンレス鋼の素材のちょっとした理解(例・さびとか)にも関心が薄いように思います。そこでこの機会にステンレス鋼に関する基本的な性質を記述致しました。
A. ステンレス鋼とは?
ステンレス鋼とは、鉄にかなり多量のクロムを入れたもの(クロム系)と、クロムとニッケルを加えたもの(クロムニッケル系)と大別して2種類あり、いずれもその他に第3、第4の合金元素を常に含んでいる複雑な組成の合金鋼の総称です。一般に鉄にクロムを合金すると、耐食性(水を含む反応系における合金性の化学反応速度、あるいは溶解速度の小さいこと)が向上します。又、対酸化性(高温における酸素などとの反応速度---酸化速度のこと)も小さくなります。従って、主として耐食材料及び耐酸化材料として使用されます。(例・タービン翼)
B. ステンレスは磁石につくか?
クロム系は、クロムの量によって13%・16%・18%・20%と大別できます。加える他合金元素として、数%以下のニッケル・モリブデン・アルミニウム・セレン・ジルコニウム・チタン・窒素etc.があります。その代表的な13%クロムステンレス鋼は見るからに黒く光る、いわば鉄に近い色つやで、磁石につくことがはっきりと確認できるステンレスです。又、台所用品でおなじみの18%クロムステンレス鋼(SUS430)は、色という点では13%クロムよりかなり白っぽくなり、焼きも入らない様になりますが、やはり磁石にはつきます。
C. ステンレスはさびるか?
一般にステンレスはその名の示す通りさびない金属と考えられています。しかし、厳密に言えばGold(金)の様に鋼それ自身がさびないのではなく、ステンレスの表面にできている酸化皮膜がステンレスをさびにくくさせているのです。どんなに強く磨かれたステンレスでもその表面には必ずと言ってもいい程、何オングストロームかの厚さで透明な酸化皮膜が密着していて、腐食を防止します。